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社長さんの知恵袋 第10回 「リアルかネットか」ではなく「リアルもネットも」の時代:2011年1月

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f:id:fujita244:20130226124718j:plain(2013年のTwitter記録)

 

「ソーシャル」というキーワードを考えてきた本連載もあと3回となりました。

そういえば、2011年になって初めてですね。

明けましておめでとうございます。 今年はどんな年になるのでしょうか。

「おめでとう」といえば、昨年末の未明というような時間帯に、「あけおめ」ツイートと思われる行動を反映して、1秒間に7000近くツイートが投稿されたそうです。

1月1日を迎えるたった4秒前に、日本の Twitter ユーザーの皆さんは、秒間のツイート数 (TPS) の最高新記録を達成しました! この時、友達やユーザー同士での「明けましておめでとうございます」など新年を祝うツイート数が、なんと6,939 TPS に達しました。

Twitterブログ 2011年1月7日付

この1年でTwitterがすっかり日本人に定着したことを象徴する発表だったと思います。

「あけおめメール」で携帯の回線がパンクするという事態が数年前から注意されてきたわけですが、メールからTwitterへ、使うサービスは変わっても日本人の行動は変わらないようです。

メールでもTwitterでも、こうした行為を「リアルで会うよりもネットで済ましてしまうようになった」と嘆く声が未だにあります。

でも、本当に「嘆くような」ことなのでしょうか?

 

「ネット世代」から「ソーシャル世代」へ

 

「あけおめ」「ことよろ」といった短い言葉でも友人同士でのコミュニケーションを欠かさない世代の登場は、以前から「ネット世代」と呼ばれ、リアルでの人間関係が希薄であるかのように言われます。 しかし、実は、最近の「携帯電話世代」である彼ら彼女らは、ネットでの濃密なやりとりをフォローするリアルな行動にも目が向いています。

ネットだけの友人関係ではなく、ネットでの出会いをリアルに確認する「コミュニティ」の存在が「ソーシャル・メディア」の登場で一気に重要さを増しているのです。 そこで新たに登場した世代を「ソーシャル世代」と呼んでみたいと思います。

実は「ソーシャル世代」は、ある年齢の塊というよりは、ネットでの行動パターンが新しいのが特徴なのですが、便宜上「世代」という言い方をします。 さて両世代を見比べてみましょう。

まず、「ネット世代」がネットでの行動とリアルでの行動が大きく異なると言われたのに対し、「ソーシャル世代」は、たしかにネットとリアルでは微妙に態度が異なるのですが、それは対人関係の慣れの問題と言ってよく、リアルでの出会った瞬間の気まずさなどが継続する時間は短く、むしろネットでの関係を反映して一気に親しさが沸くのが「ソーシャル世代」の特徴なのです。

つまり、ネットでのコミュニケーションがリアルでのコミュニケーションに反映する要素が大きくなっているのです。 その核になるのが「コミュニティ」の存在です。

ここでいう「コミュニティ」とは地域や職場、学校というような実空間で共有する場という意味ではなく、「ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)」の中にある、趣味や好みを通じて知り合う場としての「コミュニティ」というサービスを指しています。

これまでの「地縁」「血縁」「社縁」といったようなリアルなコミュニティが、ネット世代によって「うとましい物」として切り捨てられ「無縁社会」を形成している言われます。しかし実は、「無縁社会」の主要な登場人物は、年齢よりもネットを利用できない層、つまり情報弱者であり、同じ年齢層でも積極的にネットを利用する人たちは、年齢は上でも「ソーシャル世代」として、ネット上の「コミュニティ」を活用しているようなのです。

ネット上のコミュニティは、「趣味」「好み」「親しみ」を媒介として、新たな人間関係を形成するきっかけを生む場となっています。これを「ネット縁」「電縁」などと呼んで、「無縁社会」を補完するものと考えようという動きも生まれています。

どちらかと言えば、自分で選んだというよりも否応なく必然的に形成される「地縁」「血縁」「社縁」に対して、自分が好む事物を中心において共通した言葉を持てる「コミュニティ」の存在は、参加していて気持ちが良い世界だと言えるでしょう。

好きなことを中心においていますから「自分らしさを取り戻せる場」と感じることも多いかもしれません。 そして、そこで交わされる情報は、好意を抱いている人々の間で交わされるものだけに、購買行動の起点になりやすく、共通の趣味以外の事物に関する情報であっても、自分にとって共感の持てる情報であることが多いのも特徴と言えます。

「ネット世代」がネットによって「個と個をつなぐ」つまり「点と線」だったのに対して、「ソーシャル世代」は「個と個を複数つないでソーシャルを作る」つまり「面展開」することができるのです。

 

個人がメディアを持ち始めた

 

都会の孤独を和らげる「ネット世代」に対して、属する社会を超えて文化を共有する「ソーシャル世代」というと、ちょっと誉め過ぎのような気もしますが、点と点をつなぐだけに個別の「寂しさ」や「心の闇」が増幅しやすかった(その点が強調されてきた)「ネット世代」に対して、「ソーシャル世代」には「好意」が前提にある性善説を信じたくなる「明るさ」が見えます。

それは「コミュニティ」を媒介としていることと、「自分メディア」を持てるようになったことが背景にあるように思います。

掲示板や裏サイトなどに象徴される「ネット世代」のメディアは、マスに対するアンチであるために「スレ」とか「トピ」をたてて、そこに一方的に書き込んでいく、匿名で保全された自我の放出というようなものでした。

それは公的なものではなく、また抑圧された個人がマスに対抗するための「地下活動」の匂いがしました。

しかし、「Youtube」に動画を投稿したり、ブログに自分の意見を公表したり、Mixiでコミュニティを運営したり、Facebookにファンページを作ったり、トゲッターでツイートを編集したりするような「ソーシャル世代」のメディアは、マスとは別の影響力をもつ新たなメディアとして必要な層に直接投げかける力を持っています。

たとえば、芸能人が自分のブログで私生活に関すること(結婚とか出産とか)を発表したり、素人動画が世界中からアクセスを集めています。それに対して、マスメディアが後追いして情報の裏をとったり、個人の動画を集めて番組にしたりするようになったのは、力の逆転を思わせます。

個人がマスに対抗する、もしくは、非常にコアな領域(芸能人におけるファンや、ある特定分野の好事家など)に対しては、マスを凌駕する「自分メディア」を持つことができるようになったのが「ソーシャル世代」の特徴であり、いまの「ソーシャルメディア」の特徴だと言えると思います。

そして、この自分メディアで流した情報がコミュニティで増幅されて、コミュニティに属するメンバーからソーシャルメディアを通して、社会に還元されていくわけです。

 

ネットがリアルを動かし、リアルがネットに流れ込む時代へ

 

マスメディアがネット上を流通する情報に飢えて、積極的にネットとマスメディアを「クロスオーバー」させようとし、さらにマスメディアが「自分メディア」による発信をキャッチしてマスに還流する仕組みを作ることで、マスとネットが密接になったのが、ここ2年ほどのことではないでしょうか。

こうした流れが、ネットでの流行を短時間でリアル社会に広げることになり、ネットでの情報をリアル社会に流通させるルートとなっているのです。

しかし、「自分メディア」と「コミュニティ」の存在が、マスに対して影響力を持つということが明らかになってきたということを、マスメディアが自ら証明したとも言えるわけで、ますます「自分メディア」と「コミュニティ」という、マスを介さない新たな情報流通の仕組みが力を持っていくことになるでしょう。

結局、そこにアクセス出来ないと「何が流行っているのか」マスコミ情報ではわからない状況を生むことになるからです。 とくにファッションやアート、飲食店など、趣味の世界や社会の彩りとはなるが必要不可欠ではない商品を扱う分野では、その分野のコミュニティが流行や消費の動向を左右する状況が現れやすくなるといえるでしょう。

それが、ソーシャル・マーケティングに注目が集まっている理由であり、その具体的な現場となるソーシャル・メディアに関心が集まっている理由です。

マスとは別の戦略で、この「自分メディア」で情報を作ってもらい、「コミュニティ」に流してもらったりするという行動が、いま「ソーシャル・マーケティング」の立案となっていますが、別に広告会社に立案してもらわなくても出来ないことではありません。

それは、企業自身が「コミュニティ」に参加して、直接情報をもらったり、情報を渡したりするメンバーになる。つまり、企業自身が「自分メディア」を持ち、発信し、認めてもらい、対等に意見交換できる場を持てば良いわけです。

そのひとつの表れがFacebookのファンページであり、mixiの企業コミュニティです。

2010年というのは、これまで論争が続いてきた、「リアルかネットか」ではなく、「リアルもネットも」という時代へと一気に動いた感があります。

それは、「リアルもネットも」動かせる武器である「自分メディア」と「コミュニティ」という組み合わせが一気に台頭し、それが、企業だけではなく個人もが持つことができる時代になったからです。

しかも、特別なシステムを構築したり、広告会社に何億円も払わなくても、リーチできる仕組みがクラウド上に用意されているわけです。

パソコン上の画面からもしくはiPhoneの画面からアクセスできて、必要な機材も高価なものではなく、それこそiPhone1台でも実現可能なレベルなのです。 これに参加してみない手はない。 それが、2011年の状況だと思います。