新宿三光町日乗

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ゲンロンカフェで藤井直敬先生の「拡張する脳」出版イベントに行って来た

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9月25日19時から五反田のゲンロンカフェで開かれた「拡張する脳」刊行記念イベントに行って来ました。

副題にある「脳科学の最前線」というよりは、SR(代替現実)が何か、という話がメインだったのだけど、残念ながら体験はできなかった。

 

藤井先生といえば、サルの硬膜に直接貼る電極で有名で、最近では「社会脳」というキーワードで研究を進めている新進気鋭の研究者(なんとも陳腐な紹介だな)。

ソーシャルブレインズ入門――<社会脳>って何だろう (講談社現代新書)

ソーシャルブレインズ入門――<社会脳>って何だろう (講談社現代新書)

毎日出版文化賞を取った、この本も衝撃だけど

つながる脳

つながる脳

早くも4年経って、最近アート系とのコラボでも注目されているSRをひっさげて、現実のあやふやさを体感することでわかる、社会を認識する脳のいい加減さを明らかにしている。

拡張する脳

拡張する脳

 

パノラマビデオカメラで撮影した映像(および音声)をヘッドマウントディスプレイに投影し、いまカメラ越しに見ている現実の映像とビデオ映像の切り替えがわからないようにスイッチできるようになっているのがSRシステム。

ヘッドマウントディスプレイをかぶることで、現実世界が肉眼からビデオカメラ越しに置き換えられたことで、現実の認識にワンクッションあるのが、このシステムの「ずるい」ところで、体験者は、カメラで現実を見ているのか、映像を見ているのか判別しにくくなることが、このSR(代替現実)にリアリティを持たせている。

 

開催場所のゲンロンカフェは、enchantMOONを開発したUEIの清水さんと哲学者の東浩紀さんがつくったカフェで、前から来てみたいと思っていた。

http://instagram.com/p/erdAcejMeT/ゲンロンカフェなう// Edited with @KitCamApp #kitcam

 

 

思っていたよりも狭い、でも、カフェにしては広い店で、五反田の雑居ビルの6階に、人がそんなに来るものだろうかと思った。まあ、呼ぶためのイベントには事欠かないだろうけど、イベントやらないと持たないというのも実際のところだろう。

http://instagram.com/p/erdU9WDMeh/藤井先生チェック中// Edited with @KitCamApp #kitcam

 

質疑応答で最初に手を上げたのはいいけど、話し始めてみるとうまく整理されてなかったので、私の話に、藤井先生に応答はしていただけたけど、聞きたかった話にはならなかった。

 

ただ、返していただいた話は、脳科学は脳波を見ればわかるか、とか、結局有意差があるとかないとか、棒グラフの差でAかBかって意味が無いよねとか、かなり激しく同意な内容だったので、それはそれで満足。

 

本当に聞きたかったのは、脳の構造的な問題についてで、脳に伝えられる各種センサー(五感)からの情報はかなり精度高く、解像度高く連続的に捉えられているのに、脳は、それを言葉にしたり、認知したりするための判断を行うところで、情報量を減らすために、スルーしたり、集約させたり、閾値を設けたりすることでジャンプさせていて、そこがいい加減なのが、人間というか脳の問題点なのではないか、それが、このSRで見えてくるのではないか、ということだった。

 

SRは実験装置というか、体験装置として可能性を秘めているが、使い方が開発者にもまだわかっていないという。

実験に落としこむと結局、いいところをそぎ落とすことになる、という藤井先生の言葉は真摯なもので、これでなんでも出来ますよ的な実験至上主義なところがないのが良かった。

体験はホールボディなもので、しかも同じ体験をさせても、体験者に寄って反応が異なる。持ち帰る体験も異なる。つまり、個体差が大きすぎて統計的処理が聞かないのだ。

これは科学にならない。いや、従来的な意味での科学論文にならない。

そこが問題。

誰にとって問題かというと、科学と科学者にとって問題なのであって、体験者や哲学者にとっては問題じゃないかもしれない。新しい何かを生み出す体験が出来る装置であることは確かで、その使い道を藤井先生に提案する人が今後出てくることだろう。

 

SRを体験できなかったのは残念だけど、藤井先生と会場との議論の中では、実に面白い体験をした。

 

 

拡張する脳

拡張する脳