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【読書】編集とデザインの力:朝、目覚めると、戦争が始まっていました

今日は、「山の日」という取ってつけたような祝日なのですが、土曜日だし、振替休日もないし、「スーパーフライデー」並みに、みんな忘れているのではないでしょうか?

8月に祝日を作るならば、15日に「終戦の日」とか「敗戦の日」とかいう名前で祝日にしてはどうなんでしょう。

そんなことを考えるくらい、8月15日については毎年、テレビの特集だとか、記念日的な扱いをされていると思います。

では、戦争が始まった日である12月8日には、毎年、どの程度戦争のことを考えるでしょう。

この問いに意表を突かれました。

こんな本を読みました。

hojosha.co.jp

あの日のこと。
昭和16年12月8日、太平洋戦争勃発。あの日、日本人は戦争をどう感じ、何を考えたのか? 当日の知識人・著名人の日記、回想録から偽らざる戦争の実感を甦らせる。

この本を知ったのは、フェイスブックのタイムラインに流れてきた、この記事でした。

honz.jp

意表を突かれた。企画も内容も構成も、見事という他ない本だ。毎年、終戦の日にむけて様々な本が出版されるが、とりわけ異彩を放つ本である。本書を手にしてはじめて私は、「開戦を人々がどう受け止めたのか」という個々の情報が、ごっそり抜けおちていたことに気づいた。 

まさに、この言葉通り、当時の人々が、12月8日の真珠湾攻撃をはじめとする開戦をどう考えたのか について、何も知らないに等しいことに気づく。悲しんでいたのか、喜んでいたのか、戦争に反対だったのか、賛成だったのか。

一読して驚くのは、その明るさであり、勝つと信じて疑わない気持ちが、若い知識人、作家たちにもあったことだ。そして、年配になるにつれ、思いは複雑になる。

でも、そうした戦争に関する思いに関係なく、この本については、ぜひ手に取って読んでほしいと思ったので、紹介する次第です。

なぜなら、確かに企画も見事で、その構成は以下の目次を見てわかるように、吉本隆明をスタートに、当時の年齢順(つまり生まれ年順)に並んでいること、合間にニュースが挟まれていること、そして最後に太宰治の短編小説を置いていること。全てに唸る。

ラジオニュース(午前七時) 
吉本隆明/鶴見俊輔/加藤周一/黒田三郎/ピストン堀口/新美南吉/岡本太郎
ラジオニュース(午前十二時・東條英機首相演説) 
野口冨士男/竹内 好/埴谷雄高/保田與重郎/中島敦/火野葦平/亀井勝一郎
ラジオニュース(午前十二時三十分①)
高見順/坂口安吾/伊藤 整/神山茂夫/木山捷平/阿部六郎/古川ロッパ/島木健作
ラジオニュース(午前十二時三十分②) 
今日出海/山本周五郎/上林暁/中野重治/矢部貞治/井伏鱒二/横光利一
ラジオニュース(午後三時) 
尾崎士郎/金子光晴/獅子文六/近衛文麿/河合栄治郎/清沢洌
ラジオニュース(午後五時) 
青野季吉/中江丑吉/室生犀星/木戸幸一/長与善郎/折口信夫/木下杢太郎
ラジオニュース(午後七時) 
東條英機/高村光太郎/秋田雨雀/斎藤茂吉/松岡洋右/永井荷風/正宗白鳥
ラジオニュース(午後九時)
真崎甚三郎/徳田秋声/鶯亭金升/幸田露伴/徳富蘇峰
「十二月八日」太宰 治 
略歴一覧
解説:武田砂鉄

でも私が何より驚いたのは、見開きに一人ずつの言葉を紹介する、そのデザインの素晴らしさ。

いくつかは、以下の特設ページで見ることができますが、

hojosha.co.jp

組版好き、書体好きにはたまらないデザインになっておりまする。

 

でも、きっと大事なことは、いつの間にか始まっているんだろうと思います。だから、毎日、何気ないことに注意していくべきなのでしょう。

後から考えて、ガラッと変わってしまった日など来ないようにと願います。

 

朝、目覚めると、戦争が始まっていました

朝、目覚めると、戦争が始まっていました