【元気です!北海道】ゴールデンカムイ スタンプラリーとは何か?(ゴールデンカムイスタンプラリー番外編)
北海道に滞在中にブログをあげるつもりだったんですが、オジ旅のみなさんのようには行かず、夜は寝てしまい、移動中のバスの中はWi-fiがさほど強くなく記事をあげられませんでした。
強行突破の2泊3日を終えて、東京に帰ってきた冷静になって考えたらば、前提となるスタンプラリーのことを説明していないことに気がつきました。
とりあえず、1回目だけは書いたのですが、基本のことを説明しておきます。
この記事でも途中説明的に挟んでますが、まずは、ゴールデンカムイ とはなんぞやですよね。
ゴールデンカムイ は、ヤングジャンプで連載中の冒険歴史活劇漫画。
『不死身の杉元』日露戦争での鬼神の如き武功から、そう謳われた兵士は、ある目的の為に大金を欲し、かつてゴールドラッシュに沸いた北海道へ足を踏み入れる。そこにはアイヌが隠した莫大な埋蔵金への手掛かりが!? 立ち塞がる圧倒的な大自然と凶悪な死刑囚。そして、アイヌの少女、エゾ狼との出逢い。『黄金を巡る生存競争』開幕ッ!!!!
ということで、日露戦争の生き残り「不死身の杉本」とアイヌの少女「アシリパ」(アイヌの発音を表記するために作中では「リ」は促音のように小さい字なのですが、ウェブ上では表記できないので そのままで)が、隠された金塊とアシリパの出自が絡まった謎を探す旅の物語。食・冒険・歴史と文化・ミステリー・程よいギャグとエロまで入ったヒット要素てんこ盛りの作品です。
すでに単行本は15巻発行し、シリーズ累計800万分を超えるヒット漫画です。
マンガ大賞2016受賞、第22回手塚治虫文化賞「マンガ大賞」受賞など注目度も抜群です。
2018年4月にはアニメ化され、その人気はますます高まっています。
アイヌ文化に手を突っ込んだ漫画というのは記憶にありません。しかも、非常に正確を期して、良いところも悪いところも書いている。そのために実に多くの下調べもしてあるし、専門家のチェックも受けているそうです。
今回、スタンプラリーでは、その下調べに協力した多くの博物館を訪問し、学芸員から直接話を聞くことができました。どの学芸員も野田サトル氏を絶賛されていました。
このゴールデンカムイを北海道観光に結びつけようと考えたのは、公益財団法人北海道観光振興機構のTさん。今回、このTさんがツアーガイドのように各地を案内してくださったのですが、実に深い思いと行動があったので、あの番組風にご紹介します。
(1)きっかけは飲み会
Tさんは悩んでいた。
北海道観光は順調のように見えるが、高齢者や外国人が多く、若い人特に女性にアピールする要素が少ない。そこでアニメを使った企画ができないだろうかと考えていた。
一方で、2020年に白老町に民族共生象徴空間というアイヌ文化を復興・発展させる拠点がオープンする。北海道初の国立博物館である国立アイヌ民族博物館他の施設ができる。その周知と観光誘致も考えなければならなかった。
この二つの課題の交点にあるアニメがあった。
それが「ゴールデンカムイ 」だった。
しかし、伝手がない。企画も漠然としたものしか浮かばなかった。
ある日、旧知の広告代理店・JR東日本企画の札幌駐在所長のNさんと飲んでいた時に、ゴールデンカムイ を使いたいけど、無理だよねという愚痴をこぼした。
ところがNさんが思いがけないことを言った。
「ゴールデンカムイ のアニメ製作委員会にJR東日本企画が入っているからなんとかなるのではないか」
一気に突破口ができた。
ゴールデンカムイ を使うことは決まった。
では、どうやってアニメファンと北海道を結ぶつけるか。
「アイヌ文化と北海道を知ってもらうための聖地めぐり」という切り口を考えた。
「舞台めぐり」というアプリがあったからだった。
この舞台めぐりというアプリが実によくできていて、作品の公認をとってアニメキャラを使い、現地のチェックポイントではARキャラクターを使って写真が撮れて、それを地図データと合わせて保管できる。地図上に原作のシーンを写したり、「聖地なう」と足跡を残せる。
いわゆる聖地巡礼で行われていてSNS上で拡散されていた行為が、簡単にできてしまう上に、作品の公認でARキャラが使えるようにしているから、現地での活動が一段と面白くなってしまう。現地でのイベント紹介もあり、さらにアプリ独自の特典なども設定されている。観光とのマッチング効果はすこぶる高いアプリなのだった。
しかし、ただ人が流入するだけで良いのかとTさんは考えた。
導入例の取材に大洗へ向かった。
そこで地元の人たちが、聖地巡礼に来るアニメファンを「ガルパンさん」と呼んで親しんでいることを知る。大洗は「ガールズパンツァー」というアニメの聖地で、最初は戸惑っていた現地の人も、ガルパンを理解するようになり、なんならアニメファンを案内していたりするのだった。
こうした交流が大事だとTさんは思った。
ただ、ゴールデンカムイ は日露戦争後の北海道という現在の道民でも知らないような時代背景を持ち、さらにアイヌ文化の知識が必要になる。ハードルは高い。
現代の作品であるガルパンならば、リアルな場所で喜べるが、ゴールデンカムイ では作中の場所に、そのシーン通りの風景があるものは少ない。
博物館にお願いしようとTさんは思いついた。
博物館にチェックポイントを置き、そこでアイヌ文化に触れてもらおう。野田サトル氏が参考にした装束や武器などの実物がある場所、建物のモデル、人物のモデルがある場所を「聖地」として設定し、そこにARキャラクターを置いて、ゲットできるスタンプラリー。
コンセプトは決まった。
名称も「北海道はゴールデンカムイを応援しています。」スタンプラリーとした。
(3)チェックポイントの選定、ルートの決定
ゴールデンカムイ の作中に登場する土地にあるアイヌ文化を紹介している博物館を中心にチェックポイントとなる場所を決め、キャラクターを決めた。
施設の理解も得られた。
元より野田サトル氏がすでに取材に訪れていたり、原作ファンが来たりしている場所だった。学芸員も自分たちの知識が生かされるのを喜んだ。
舞台めぐりのQRコードを印刷したパネルや、登場人物のパネル、VRで北海道内の景色を見る装置も置いた。そして、イベントは開始された。
しかし、北海道は広い。内地のアニメファンの想像を超えて広い。
どの空港に降りて、どこを回るのか。
果たして回れるのか?
ここで、Tさんの前職での知識が生かされた。彼は旅行代理店を経て現在の職場に入り、現在は財団に出向している身分だった。道内の土地勘は人一倍ある。
レンタカーを使えば2泊3日でいけるはずだ。それには旭川空港から入って、女満別空港から帰るのが最適だ。新千歳空港を使わないプランを提案する力量は並ではない。
しかし、本当に回れるのか。
机上の空論ではないのか。
やってみよう。
この2泊3日プランを実際に体験し、スタンプラリーを完遂するミッションのツアーを行うことになった。準備を進めていた9月6日。地震が起きた。
現地の様子を報じるマスコミは、繰り返し被害の大きかった厚真町の山崩れを空撮し、札幌市清田区の液状化の写真がSNSにあふれ、政府は北海道全土を激甚災害指定した。
しかし、繰り返しになるが北海道は広い。
北海道を本州に重ねると、こんな感じになる。
(追記:スタンプラリーの区間を重ねたサイトがあったので。)
厚真町は確かに大変だが、函館も小樽も旭川も釧路も随分遠いので、停電があったことを除けば、被害は継続したわけではなかった。
北海道は元気です。
これも、スタンプラリーとともに伝えてもらおう。
Tさんの動きは早かった。
こうして、10月6日から8日。奇しくも北海道胆振東部地震から1ヶ月がたったその日。10人のインフルエンサーが羽田空港に集まった。
スタンプラリーという名の大人の修学旅行の始まりだった。
というわけです。
では各地での様子は、長くなると思うので、順番にご紹介していきます。