【大人の遠足】ワインツーリズムやまなし2019に行ってきた(その6)くらむぼん
お昼を食べた後に向かったのは、くらむぼんワイン。
スペシャルツアーに参加するためです。
こちらは初めて。今までは通り過ぎていたわけです。
ところが、話を聞けば聞くほど、この社長の気骨ある姿勢に惚れ惚れします。
大体、くらむぼんて何? ということから入りますよね。
山梨県なので、「やまなし」つながりだというんです。
『くらむぼん』という名前は、宮沢賢治の童話『やまなし』で蟹が話す言葉に由来します。
人間と自然の共存、科学の限界、他人への思いやりを童話で伝えた宮沢賢治に共感し、
この社名が名づけられました。そして“くらむぼんワイン”は、勝沼のブドウ畑と自然が両立しつつ、
地域住民とワイナリーが協力し合っていく。
その中で地域の特産、甲州やマスカットベーリーAが日々の食卓に登るデイリーワインとして親しまれ、
和食文化の一端を担っていくことが私たちの願いです。
もともと、1913年に初代がワイン作りを始め、当代で4代目。
1932年に周辺農家との協同組合だったのを1962年に野沢家が持ち株を買い取り「山梨ワイン醸造」を設立、2006年に株式会社山梨ワインにしたのに、2014年に「くらむぼん」にした。
4代目のわがままと取られてもおかしくない話です。なんでそうなったかは追々。
会場は、母屋。
この母屋はテイスティングやワインを購入できる日本家屋のワインサロンです。
築130年になる伝統的な母屋は、牧丘町にあった養蚕農家の家屋を移築させたものになります。
甲斐ワイナリーも良かったけど、ここも素敵ですね。庭もいいんです。
早速振る舞い酒をいただきます。
有料でしたが200円ならばと、アジロンのスパークリングをいただきました。
きれいな色なんです。
開始時間も迫ったので母屋の中へ。このお座敷がメイン会場です。
縁側に木枠の窓。いいわあ。4代目は中学生まで実際に住んでいたそうです。
荷物を置いて、まずはぶどう畑から。こちらはシャルドネとカベルネの畑。
殺虫剤を使わない、除草剤を使わないので、雑草だらけですが、その雑草で土が豊かになると言います。以前は、薬も使っていたけど2007年から自然栽培で天然酵母のワイン造りに変えた。直後は収量が半分になったけど、元に戻った。地味も強くなったと思う。
甲州の畑だったのを雪害で棚が潰れて、1998年に垣根づくりに栽培法を変えたそうです。その前は田んぼだった。
棚だと100本くらいの木で済むスペースに垣根だと3000本の木が必要。
今は、栽培するワイナリーが増えてきてカベルネなどは木がない。
葉っぱの数で糖度が変わる。大体13〜4枚。今年は雹で葉にあながあいた。
結局、ワイン造りにとって何が良くて何が悪いか、わからない。だから手を入れない。葡萄がワインになる手伝いをしているだけで、こちらが作っているというのではない。
カベルネは葉っぱが赤いものだが、昼夜の寒暖差が影響するので、温暖化の影響がある。
自社畑のブドウは、3〜4割で30〜40軒の農家から甲州葡萄を中心に購入している。
甲州は、山肌に鳥居が書いてある鳥居平(とりいびら)のあたりで始まった。この送り火をやる場所でぶどう祭りも開催される。ここには自社畑もある。
続いて、セラーへ。
樽の話など。樽に入れるのは2割程度とか。樽の数字で何がわかるかとか。
100年前に手彫りした地下倉庫にも入ります。
この天井に空気穴が開いてたとか。今は塞いでありますね。
ここは、横に川が流れているので、水冷で温度が変わりにくいんだそうです。
あとで見たらば、本当に横に川が。
打栓する機械とか、倉庫の周りにいろんなものが置いてあります。
さて、中に戻って、お話を聞きながら試飲です。
今日は7本。
日本全国で300くらいのワイナリーがあり、山梨で85くらい。そのうち勝沼町に35ぐらいあるそうです。ワインの流通量の国産ワインが3割程度、日本ワインは5%。
瓶を回しつつ、試飲です。片方に12人くらいづついて、各1本で大体回るくらい。
最初はくらむぼん甲州スパークリング。すっきりした白のブリュット。
くらむぼんさんは、チケットのデザインがきれいです。
特に、このNシリーズは端正ですね。野沢のNらしいです。
間違えそうでもあります。
社名のついたくらむぼんシリーズはイラスト。
そして最後は、さっき飲んだアジロンのスパークリング。私はこれが好きですね。
最初は多めについでいた人たちが、だんだん遠慮がちになり、最後の方に回ってくる量が多くなるという。7本の威力ですね。
野坂さんは、自分の代で自然栽培で天然酵母に変えたけど、酸化防止剤の亜硫酸塩は使うという話は、単なる自然派ではなく、理論派だなと思いました。亜硫酸塩を使わないと、ワインが微生物などで変性しやすく、品質管理上消費者にも迷惑をかける。頭が痛くならないワインになるように使用量を控える工夫は怠らない。そういう工夫が大事なんだと思います。
色々と面白いお話を伺い、また一つ良いワインを知り、また一人、素晴らしいワイン人を知った。そういう大人の遠足でした。
すっかり夕暮れになった、勝沼ぶどう郷駅から帰りました。
おしまい