木曜日ですが妻が休みだったので、一緒に日本橋三越あたりに行ってきました。
お目当は二つ。
一つ目は、三井記念美術館で開催中の「驚異の超絶技巧」展。
三越の隣にある三井本館の中にある三井記念美術館はなかなかユニークな展覧会を開催することが多いのですが、今回の「超絶技巧」は2014年開催の時も行きましたが、まあ、驚きの連続です。
出品目録はこちら。
冒頭に撮影可の展示物が二つありまして、これを見ていただくのがわかりやすい。
これは、生花を型にしてアルミを流し込んで作ったものを組み合わせた作品。
現代作家のものです。
そう、今回の特徴は明治の超絶技巧の作品だけではなく、現代作家のものも展示していること。明治期のものが輸出用の工芸品だったのに対して、現代作家のものはまさにコンテンポラリーアートなのですが、その背景に脈々と流れる技術の命脈のようなものを感じます。
明治期のものは、京都の清水三年坂美術館の収蔵物が多いです。
その特徴は2014年の展覧会の時の村田館長のインタビューがわかりやすいと思います。
この明治期の七宝や牙彫(象牙の彫刻)などの凄さは実物を見ていただくしかないと思います。こればかりは、写真ではその細かさというかスケールがわかりにくいのですね。
実に細かい、という一言の中にある「細かさ」が半端ではないのです。
そして、自在については、動画で見ないとわかりにくい。とにかく本物のように「自在に動く」よう組み立てられた作品が「自在」なのです。
蛇や伊勢海老などを細かいパーツを組み合わせて動くようにしてあるので、これはフィギュアやおもちゃの世界でも動くものが好きな人にはたまらないのではないでしょうか。
まさに日本人が好む細部に宿る技術の集約が超絶技巧工芸作品なのです。
そして、それらの明治期の牙彫や木彫に見られるスーパーリアリズムを現代に再現している作品がたくさん展示されていて、これがまた驚きです。
総じて言えば、硬いもので柔らかいものを再現するとか、異質の質感を表現するというものになるでしょうか。金属や象牙や鹿の角、木材で動植物の滑らかさ、柔らかさなどをまさにリアルに表現しています。自在では、蛇の骨というさらに高度なものを作っています。
一番若い作家は平成元年生まれ。まさに現代の作家による作品なのです。
会期は、12月3日まで。着物で行くと300円引きになります。
もう一つは、日本橋三越の三越劇場で開催された三越落語会。今回が第599回ということで次回は600回ですね。
1953年に第1回が開催されたというのですから、64年掛の600回。
いわゆるホール落語という寄席以外の落語会の先駆けとも言えるものだそうです。
今回はトリがさん喬で、前座の後、順に以下の通り。
瀧川鯉橋「元犬」
三遊亭遊馬「大工調べ」
古今亭菊之丞「百川」
休憩
林家正雀「紙屑屋」
柳家さん喬「浜野矩随」
6時開始で終了が9時ということで、たっぷりと本格落語を堪能しました。
それぞれに色の違いがあって、しかもみなさん見事で、楽しかった。
特に正雀が紙くずをよりながら本が出てきたと言って、いろいろな芸事を見せるのは秀逸で、いつもよりたっぷりだったんじゃないでしょうか。都々逸、浄瑠璃、義太夫、歌舞伎の声色(歌右衛門)、自らの師匠である彦六の声色と芸達者でした。
鯉橋の「元犬」は下げがソフトバンクのお父さん犬の出自、という現代風、遊馬の「大工調べ」は「細工は流々、仕上げをごろうじろ」というキーワードを説明することで、下げの「調べをごろうじろ」がわかりやすくなるという工夫、菊之丞の「百川」は日本橋という土地に実際にあった料亭の話なので馴染みやすく、爆笑編の正雀の後に、さん喬が人情噺をしっとりと聞かせて終わるという構成も見事な連携でした。
それにしても三越劇場に来るといつも思うのですが、会場のお客さんの年齢が高い。おじさんじゃなくておじいさんばかり。それだけに、歌右衛門と彦六の声色に大受けしたり、ソフトバンクのお父さん犬の下げがイマイチだったり、会場の客層で落語の受け方も変わるものだと感心します。
客層は大事ですね。
秋の1日、たっぷりと芸術を楽しんできたのでした。