【感想】100分で名著の6月放送「アルプスの少女ハイジ」は安達祐実に感動した
100分で名著というNHKの番組があります。
名作を4回×25分、計100分で紹介する番組。
一度は読みたいと思いながらも、手に取ることをためらってしまったり、途中で挫折してしまった古今東西の“名著”。
この番組では難解な1冊の名著を、25分×4回、つまり100分で読み解いていきます。
プレゼン上手なゲストによるわかりやすい解説に加え、アニメーション、紙芝居、コントなどなど、あの手この手の演出を駆使して、奥深い“名著”の世界に迫ります。
案内役は、タレントの伊集院光さんと、安部みちこアナウンサー。
偉大な先人の教えから、困難な時代を生き延びるためのヒントを探っていきます!
6月放送分は「アルプスの少女ハイジ」だった。
私はアルプスの少女ハイジという小説が好きで、子供の頃から何度となく読んでいるだけでなく、ヨハンナ・シュピリの原作を超えた「続編」も全て読んでいる。
アメリカ人が書いた続編という不思議な本があるのですよ。
当然、宮崎駿・高畑勲のコンビで有名なアニメも何度も見ているし、その話を自分でして泣くくらい好きでもある。
そういえばアニメもテレビ放映45周年らしい。
これはこれで気になるけど、ともあれ、今は100分で名著の話だった。
放送で伊集院光が、アニメと違うことに驚いていたけども、原作好きの私にはすっかりお見通しで、このアニメとの違いに現れている点というのが、原作の肝でもある。
それにしても、今回解説をしている翻訳者の松永さんが素晴らしかった。
とにかくご本人も「ハイジ」が好きでシュピリに詳しく、ガラーツの温泉やマイエンフェルトに実際に行っているというのがすごい。
彼女が語るアニメとの違いは、こちらを直接読んでいただきたい。
スイスの作家ヨハンナ・シュピリの原作小説を丁寧に読み込み、物語の舞台であるスイス高地でのロケハンまで敢行したという力作ですが、一年間で全五十二話というテレビ放送のためでもあるのでしょう、脚色によって原作を大いに膨らませていて、実はシュピリの小説とは異なる部分がたくさんあります。
そういえば、松永さんもこの解説の中で述べているように、あれだけ日本のアニメを放送しているヨーロッパにおいて、スイスでは「アルプスの少女ハイジ」は放映されていない。「フランダースの犬」が地元の人が原作を全く知らなかったのがアニメを見て興味を持ったという話があるくらいなのに、スイスでは誰も宮崎駿が描くハイジを知らないらしい。それが、今年展覧会をやるそうだ。
日本のテレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」の展覧会が17日、スイス国立博物館(チューリヒ)で始まる。欧州をはじめ世界中で愛される名作だが、原作の舞台となったスイスではなぜか放映されたことがなく、公式に紹介されるのは初めて。
今年は、いろんな点からハイジに注目の年とも言えそうだけど 、やはり原作を読んでほしい。
松永さん訳の雑誌連載は、まだ単行本になっていないらしいのが惜しいけど、彼女の訳文が素晴らしいと思ったのは、100分で名著の中で安達祐実によって朗読されたのを聞いたから。
何よりも、安達祐実の天才が余すことなく発揮されている、この朗読がすごい。
ハイジ、ペーターのおばあさん、クララ、クララのおばあさん、ロッテンマイヤーさんと女性が何人出てきても、すべて違う読み方で、違う声の高さで、それがまた的確で見事だった。
見逃した方は、オンデマンドで見て欲しい。唸りますよ、本当に。
この朗読を見たことで自分の中で宝物が増えた気分になります。
そして、原作を読むと、ハイジが少女の成長譚というだけではなく、松永さんのいう通りおじいさんやクラッセン先生といった大人の回復の物語でもあることがわかります。
アニメや絵本もいいけれど、原作を読めば、新鮮な感動を味わえるはずです。故郷や家族の喪失からの人間回復の物語は、子どものみならず大人の読者の心も慰め、希望を感じさせてくれることでしょう。
番組紹介のサイトとしては、十分に丁寧な作りのウェブサイトも見ていただきたいですが、何より原作を読み直したい気になりました。

シュピリ『アルプスの少女ハイジ』 2019年6月 (NHK100分de名著)
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松永さんの翻訳によるショート版。

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これもハイジものだけど、映画の原作。チャーリー・シーンがペーター。
14歳になったハイジは、アルプスを離れ、イタリアの寄宿学校へ行く。しかし、戦争が始まり寄宿学校は軍に接収され、ハイジたちは工場で酷使される。ハイジたちは脱走し、アルプスへと向かう。
マンガ版もあるんだね。
オーディブル版は、読んでくれるから時間のない人にはいいかも。
当然アニメももう一度見たい。
これは実写版ですね。